「どうして水泳をやっているのか、一度考えてみるといいよ」。この本の中で、コーチがナルに言った言葉だ。ああ、なぜ私は新体操をやっているのか。問いかけられているようで、ドキッとした。
私は年長の秋から、新体操を習っている。けれど、この5年間、どうして新体操をやっているのかなんて、一切考えたことがない。新体操は楽しいし、大好きだ。けれど、家での練習をさぼってしまったり、お母さんに言われないと練習ができなかったりする。好きなのに練習は面倒になってしまう。だから、コーチの言葉が自分に向けられているように感じたのだ。
私はこの「5番レーン」を手に取ったとき、となりの国の話だし水泳もやっていないので、自分には関係のない話ではないかと思った。けれど、読み進めていくうちに、私とナルとの共通点や相い点が見えてきて、物語に引き込まれて一気に読み終えた。
「5番レーン」ってなんだろうと思い、調べてみた。5番レーンは、水泳の大会で二番目に速い人が泳ぐレーンだ。ライバルが泳いでいる4番レーンは優勝候補だ。速い順に4、5、3、6…という順番になるようだ。ナルはずっと1番だったけれど、2番になってしまい、自分が思うように泳げずもがいている。そうしているうちに、ライバルの水着を盗んでしまった。きっと、水着を盗んでしまうほど心が追いつめられていたのだ。それだけ一番になりたかったのだ。でも、ライバルに「ごめんなさい」の手紙を書いて、勇気をふりしぼって自分から謝りに行った。ナルは最初、ライバルに勝ちたくて5番レーンで泳いだ。でも、最後のナルの泳ぎは、自分に勝つために5番レーンで泳いだ。今持っている自分の力すべて出し切って戦ったから、悔いなく泳げた。
この夏、北海道ではインターハイが開さいされている。私はまだ、大会に出たことがないし、観戦したこともない。どうしても新体操の大会をその場で見たくて、お母さんにお願いして札幌まで連れて行ってもらった。演技している選手は大きく体を動かし、手の先から足の先まで美しく見えるようにていねいに動かしていた。また、曲に合わせて表情を豊かに変えていた。演技を終えた後の選手はさわやかで、あんなにキラキラしている高校生を見たのは初めてだった。自分の納得のいく演技ができた、やり切った、という快感が伝わってきた。本気で戦う高校生を見て、私は今すぐに演技したい気持ちにかられた。私にもできる技もあり、ワクワクした。
私、夢を見つけた! それは、インターハイに出場すること。そのために、新体操部のある高校に入りたい。また、私に足りないものは、自分との戦いだ。夢は、はるか遠くの空に輝いている星のようだ。でも夢の星は、はっきり見えている。だから、私は一歩一歩進んでいこう、夢の星を目指して。