平和

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  • 2023年11月8日
平和

  北海道は昔、大人も子どもも巨人ファンが多かった。テレビの野球中継がほとんど巨人戦という時代が長かった。人気が分散し、定着したのは1970年代のことだったろうか。85年にはバース、掛布、岡田らが本塁打を連発するタイガースがセ・リーグ優勝し、日本シリーズも制覇した。もう38年前のことになる。

   異動した恵庭支局で、あの熱い秋を経験した。少し悲しい笑い話が身近にたくさんあった。結婚以来、無言でテレビの前に座り野球中継を見ていたUさんは、「実は―」と、初めて奥さんに阪神ファンであることを打ち明けたとか。背負い続けてきたつらい時代が終わり「六甲おろし」が明るく響き渡った瞬間だ。歌詞を、今でもそらんじることができる。

   タイガースが2度目の日本一を目指してオリックス・バファローズと戦い、大接戦の末に勝利した。38年の歳月の重さなのだろう、勝利から3日が過ぎたのに「また負け」という不安が消えない。テレビに胴上げなどの再生画面が映ると慌てて確かめるように見詰めてしまう。

   きょうは立冬。夏のような秋も週末には冬らしくなるとか。次の勝利に向けた勇者たちの鍛錬が本格化する。次は、世界から戦火が消えた平和の中で優勝を。スポーツには平和と青空が似合う。(水)

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