子どもは社会の宝なのに、大切にされるどころか、食べ物を与えられなかったり暴行を受けたりして虐待される子がいる。餓死や衰弱死する子もいる。
一人では生きられない小さな命を踏み付けにする行為に背筋が凍るが、児童相談所(児相)に寄せられる児童虐待の相談件数は毎年、過去最多となっている。2022年度も例外でなく、21万9170件に上った。
虐待が増えたのか、国民意識の高まりで寄せられる情報が増えたのかは分からない。いずれにせよ、手に不自然なやけどの痕があるなど心配な子を見掛けて声を掛けても、知らない大人に虐待されていると言える子は少ない。もし、自分に悪いところがあるから虐げられると思っていれば、なおさら口が堅くなり、地域で状況を把握するには時間がかかる。
頼みの綱は児相となるが、被害者自身が相談しても支援を得られなかった例がある。このため厚生労働省は24年度に児童福祉法を改正し、虐待に詳しい職員「こども家庭ソーシャルワーカー」を児相に置く仕組みを整える方針。専門性の高い職員が適切な対応を円滑に進めるということで、苦しむ子どもたちが見逃されないよう、私たちは地域での気付きをつなげていきたい。(林)