無人公共交通に期待高まる 市の自動運転バス実証事業 効果を検証

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  • 2023年11月6日
無人公共交通に期待高まる 市の自動運転バス実証事業 効果を検証

  苫小牧市が9月20日~10月15日に実施した自動運転バス実証事業。JR苫小牧駅―海の駅ぷらっとみなと市場間を無料で1日5往復し、延べ1359人が乗車した。利用者からは「便利で快適」などとおおむね好評だったが、水たまりで急停車するなど運行の一部で課題もみられた。市は安全性や効果などの分析を進め、2024年度にも冬季の実証事業を計画。新たな公共交通を確立しようと検討を続けている。(室谷実)

  「スムーズ」「楽しい」好評の声多く

   同事業は市地域公共交通計画で位置付けた「新たなモビリティサービスの導入に関する調査研究」の一環。公共交通の維持や利便性向上に向け、運転手不足や残業時間に上限規制を導入する2024年問題など課題が山積する中、将来の実装化を見据えて効果を検証する初の取り組みだ。

   ボードリー(東京)に委託し、運行は日軽北海道(晴海町)が担った。電気自動車(EV)のバス1台(定員10人)を使い、苫小牧駅とぷらっとみなと市場を結ぶ片道約3キロで運行。オペレーターが1人乗車し、状況に応じて自動と手動を切り替える「レベル2」で走った。事業費は約6600万円だった。

   時速20キロで片道約30分間かかるが、乗客からは「思ったよりスムーズ」「ゆっくり走って楽しい」などと評価する声が多かった。同事業の路線周辺施設の関係者からも、本格導入を望む声が相次いだ。

   とまこまい海の駅ほっき館(汐見町)の杉本一館長は「バスは話題性もあって良い」と期待し、ほっき貝資料館(港町)の高野幸康館長も「フェリーターミナルまでバスでつながると、もっと人の流れができる」と話す。

  安全性向上が課題来年度は冬道実証

   一方、バスの周囲は乗用車が時速40~50キロで走るため、バスが交通の流れを妨げている一面も。ぷらっとみなと市場やその周辺のイベント開催日には、バスが混雑に対応しきれない可能性があったため、路線の一部を短縮して乗客から不満の声も聞かれた。

   また、バスが水たまりや落ち葉を障害物と検知し、急停車するケースもあった。停留所に停車したままバスが動かず、乗客が降りて徒歩で目的地に向かったこともあったという。

   市まちづくり推進課は「事業者からいろいろな報告が入っているが、安全第一で大きな事故なく運行することができた」と受け止めつつ、利用者アンケートの回答101件を分析するなど、事業内容やその効果を検証している。

   ただ、本格導入に向けては安全性のさらなる向上が不可欠。24年度は冬道で実証する構えで、同課は「バスが1年間運行できるか費用対効果を含めて検証し、実装できるか検討したい」と話している。

   自動運転バス カメラやセンサー、衛星などを使って、車両の位置や障害物を把握し、運転手がいなくても車道を走行するシステム。段階によってレベル1~5に分かれており、レベル5が完全自動運転となる。全国で実用化に向けた実証実験が行われ、道内では十勝管内上士幌町が定時運行している。苫小牧市の実証事業も高い関心が寄せられ、期間中は室蘭市や伊達市、洞爺湖町などの視察が相次いだ。

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