近代美術名品選 上 西洋と東洋 響き合う表現

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2023年11月6日
近代美術名品選 上
西洋と東洋 響き合う表現

  苫小牧市美術博物館は19日まで、特別展「出光美術館近代美術名品選―四季が彩る美の世界」を開いている。出光美術館(東京)収蔵作品を61点厳選し展示中で、担当学芸員が3回にわたって紹介する。

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   美術博物館は、出光興産北海道製油所操業50周年と同博物館開館10周年を記念し、特別展を開催しています。展覧会では、移ろいゆく季節の風景、暮らし、草花や生き物の姿に着目し、日本の近代美術において、芸術家たちが模索した表現の数々をご紹介しています。

   展覧会の冒頭を飾るプロローグでは、自然や風景を題材に、西洋と東洋の表現、精神性が響き合う20世紀初頭の作品群を出光美術館所蔵の近代美術コレクションから選出しました。

   例えば、フランスの宗教画家・ジョルジュ・ルオー(1871~1958年)の画風はカトリック信者としての信仰に裏打ちされたものですが、重厚なマチエールと神秘的な光の描写、深い精神性は国や時代、信仰の違いを越えて多くの人を魅了しています。どこか日本の浮世絵版画をほうふつとさせる構図や、墨を用いたかのような筆触の黒い輪郭線は、19世紀末から20世紀初頭にかけて日本美術が西洋美術に影響を与えた、いわゆるジャポニスムの影響を思わせます。

   一方、日本の画家である佐伯祐三(1898~1928年)の《踏切》は、一見するとヨーロッパの街角にも思える風景です。本作は、パリに留学後、帰国したわずか1年の間に描かれた一作で、自宅のあった新宿の下落合(しもおちあい)付近の踏切を描いたものですが、パリの街並みの空気感や色彩を希求する画家の筆跡が強く感じられるでしょう。

  (苫小牧市美術博物館主任学芸員 立石絵梨子)

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   午前9時半~午後5時(最終入場は同4時半)で、月曜休館。観覧無料。

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