能登半島地震を教訓に災害対応の在り方を検討してきた政府の作業部会(主査・福和伸夫名古屋大名誉教授)は26日、報告書をまとめた。高齢化地域における災害関連死を防止する観点から、被災者支援の強化を打ち出したのが柱。段ボールベッドの準備、調理設備の設置などを通じた避難生活環境の改善のほか、トイレの確保を求めた。
被災者支援に関して、避難所開設時から間仕切りや段ボールベッドを利用できるようにするほか、大型のガス設備や燃料を含め、炊き出しが可能な環境をつくることを提言。携帯・簡易トイレの備蓄、マンホールトイレや仮設トイレの確保も促した。また、キッチンカーやランドリーカーといった移動型車両を被災地へ迅速に提供できるよう、登録制度の創設検討も明記した。
能登地震では、ホテル・旅館に移る2次避難が行われたが、地元から離れることによる孤立や避難長期化が課題となった。そこで、被災者の希望を踏まえた宿泊先のマッチングや継続的支援の仕組みを検討し、国がマニュアルを整備すべきだと指摘した。
被災地が半島で、支援のためのアクセスルートが制限される課題があった。このため、陸路での移動が困難な場合に備えた空路や海路の確保、民間ドローンの積極活用を要請。災害に対応する人材の確保に向け、NPOや民間企業、ボランティアとの連携体制の構築を全国規模で進める必要性も挙げた。
一方、大規模災害時には国や自治体による「公助」が極めて困難な状況になると指摘。食料や飲料水などの備蓄に可能な限り取り組むよう、国民向けの呼び掛けを盛り込んだ。
報告書を受け取った坂井学防災担当相は「能登で起きたことは全国どこでも起こり得る。南海トラフや首都直下地震にも対応できる体制を取っていきたい」と述べた。
能登地震では、22日時点で災害関連死が235人となり、直接死の227人を上回った。