昨年の文化庁調査で「本を1カ月に1冊も読まない人」が初めて6割を超したことはこの欄でも書いた。インターネット全盛。活字離れはどこまで広がるか。好奇心や知的欲求を満たしながら、経済的にも負担の少ない方式を探り、読書を楽しむ人たちが、ごく身近に、いる。読む楽しさを、改めて教えてもらった。
Aさんの大原則は「本にはお金を使わない」ことだ。「本は図書館で借りて読むもの」と決めている。時間があれば図書館に出掛け、分野や作者にこだわらずどさっと本を借りてくる。年齢とともに登場人物の片仮名人名が覚えにくくなって外国小説は減ったものの、腕力は十分だから、厚くても重たくても読める。
Bさんも「何でも読む派」だ。書店でパラパラと速読し、面白そうなら作者名を知らなくても買う。読後の行動が特徴だ。気に入ったものは本棚へ移すが、ほとんどは古書店へ運ぶ。自宅の空間はただではない。詳細な読書記録を作ってパソコンに打ち込み、着々と文章力の鍛錬もしているのはCさん。友人へのメールが最近、鋭く長くなって来たそうだ。
図書の交換と移動の複雑な地下ルートが日々、広がっている。政党や政治家の重心が移り変わるように。「積ん読派」も、ボーッとしてはいられない。(水)