白老町大町の俳人で喫茶店経営、相吉京子さん(84)=俳号・香湖=が遡上(そじょう)するサケの姿を詠んだ俳句が、現代俳句協会の会員誌「現代俳句」の10月号で優れた作品49句の中の1句に選ばれて掲載された。同誌のウェブ版でも、自身による句の解説に、店の常連で町竹浦のドローンカメラマン瀧谷栄さん(57)が編集部に提供したウヨロ川を遡上するサケの映像を添えて配信され、作品の叙情が分かりやすく伝えられている。
「現代俳句」は全国規模の俳句団体、現代俳句協会が発行し、会員が寄せた名句などを収録する月刊誌。この中に「列島春秋」というコーナーがあり、全国49地区の会長が推薦した各1句、計49句を掲載している。ウェブ版では、この中から地域性が感じられる3句を編集部が選び、作品とともに俳人自身による作句解説と状況を伝える写真を配信するコーナー「春秋余滴」を設けている。
相吉さんは会員として毎月作品を送っており、今回は「列島春秋」の49句、さらにウェブ版の「春秋余滴」の3句の中の1句に選ばれ、編集部から解説文と写真の提供を依頼された。
秀作とされた作品は、「川の底 小石美(うる)わし 鮭(さけ)の道」。相吉さんは解説文で、東京から白老への移住や町内で喫茶店を営んでいること、環境保全活動に取り組んだ半生を伝え、「川底の石に腹を擦り付けるようにして、浅瀬をものともせず、上流を目指す(サケの)姿にはうるわしさを感じずにはいられません」と結んだ。瀧谷さんは掲載の経緯を知り、今夏撮った動画を編集部に提供。筆頭句で作品と一緒に紹介された。
「現代俳句」のウェブ版の配信は今年1月に始まり、9月から一般公開されている。「春秋余滴」の作品を動画と配信したのは初めてで、同誌編集部の担当者は「ウェブでカラー写真を紹介できるようになった上に、今回は動画を配信でき、句をイメージしてもらいやすくなった」と喜ぶ。相吉さんも「句の心が伝わる映像を瀧谷さんが提供してくれ、親切が胸に染みる。選句した編集部にも感謝している」と目を細めた。
相吉さんは1991年、白老の文芸結社「白老ペン」の俳人、故紺野つや子(俳号=理恵)さんから俳句を学び、同年に全国規模の俳句結社だった「氷原帯」鵡川支社長の故宮脇修(俳号=木脩)さんから俳号を得た。98年結成の野の花俳句会主宰。2004年氷原帯新鋭賞、08年同新人賞、17年白老町文連協功績賞。