何という実りの秋だろう。黄金色に輝いた水田がコメの国・日本の秋を盛り上げている季節のはずなのに今年は昨年とは違う不安が各地にただよっている。
能登半島一帯が大地震に襲われたのは今年の元日。家族の楽しい夕食の頃合いだった。その「まさか」の地震から9カ月半後の秋に、今度は大雨の襲来。ようやく落ち着きを取り戻しつつあった地震の被災地に「まさか」の雨が襲い掛かった。避難所から転居できた数日後、今度は復興住宅が床上浸水した。カメラの前に立った高齢者が「まさか」を力なく繰り返す。「ドアが開かない。逃げられない―」と打ち込まれた女子中学生のLINE(ライン)を読み返す祖父や父親、友人の姿もつらい。救助に入った宅地に残っていたのは家の土台だけだった。
23日午後、ロシア軍の哨戒機が、宗谷半島に近い礼文島付近の日本の領海を3回に渡って侵犯した。日本はF15戦闘機などによる緊急発進を行いロシアに強く警告。熱や閃光(せんこう)を放つ「フレアの放射」を初めて行った。ミサイル攻撃を回避する「おとり」とか。武器には該当せず射撃には当たらないという。ウクライナへの侵攻前、ロシアの哨戒機はどんな見張りをしていただろう。「まさか」。そんな不安もよぎる、秋。(水)