13日まで開かれた苫小牧市議会の第7回定例会。注目されたのは、8月28日に公務復帰したばかりの岩倉博文市長の健康状態だった。しかし、岩倉市長が答弁する回数は少なく、議員からは「ちょっと元気がない」「気を使って質問しにくい」などの声。本会議で岩倉市長に休憩を促す動議が出される異例の事態も発生し、市政リーダーとしての在り方が問われる形となった。(報道部・石川鉄也)
いつもの勢いなく初の「休憩動議」
岩倉市長は今回、予定していた本会議の日程すべてに出席し、足腰を考慮して着座のまま答弁を行った。しかし、答弁する機会は限定的だった上、答弁書をそのまま読み上げる場面が多く、言葉で責任を果たしてきた往事の勢いはなかった。目をつぶったり、体を傾けてうつむいたりしているように見られる場面もあり、傍聴席から「大丈夫なのか」と心配の声が漏れた。
議員からも「あの状態で居続けるのは逆にマイナスでは」と厳しい視線が注がれた。6日の本会議では、桜井忠氏(会派市民)が市長の健康状態を不安視し、休憩を求める動議を提出。本人の意思でその後も出席して再開したが、「休憩動議」は市議会史上初めてだ。
共産党市議団の小野寺幸恵団長は「(岩倉市長は)声を出すのもやっとの印象」とかつてとのギャップに違和感を覚えたといい、「弱いところを見せるのが嫌いな人というのを見てきた。選んでくれた市民に対して責任を果たしたい思いが強いのでは」と推察した。
「政治判断難しいのでは」進退問う声
市長の進退を問うような一般質問もあり、民主クラブの小山征三代表は「頑張っている姿を見せたいのは分かるが、首長となると、政治判断が求められ、今の状態では難しいのでは」と疑問視。「内心では大変だと思うが、議会となると違う。議論を深めるまでの回復には至っていない」と指摘した。
会派市民の谷川芳一代表も「6月の定例会から回復に向かっているように思えない。私が支持してきたのは元気な岩倉市長で、晩年を批判されてほしくない」と訴え、改革フォーラムの牧田俊之代表は「回復するなら頑張ってほしいが、もし今回と同じような状態で議会に出てくるのであれば、決断を問いたい。俺がいなければ駄目だというものを示して」と求めた。
一方、市長を擁護する声も上がる。公明党議員団の神山哲太郎団長は「具合が悪く、体力は落ちているように見えたが、遠慮する意識はなかった。市長も覚悟を持って出てきたと思うし、それを望んでいたのではないか」とし、「(次回は)体調を整えて健康体で出てきてほしい」と願う。
最大会派新緑の金沢俊会長は「会派としてしっかりと支えていく姿勢は変わらない」と強調し、今後に向けて「来年度予算編成に関わる重要な時期。最大限、市長を支えていく動きを取りたい」と述べた。
「課題に道筋」改めて意欲示す
岩倉市長は定例会終了後、「もう少し答弁をしたかった。今後はお互いに気を使わないような雰囲気になっていけば」と総括。JR苫小牧駅前の再開発などを念頭に「決断しなければいけない問題、課題は多いが、それにぶつかっていくことに価値がある。ぶつかって道筋を付けていくことが自分の役割」と前を向く。外での公務についても「体力的な部分はあるが、その壁をどう破っていくか。つえを使ってでも歩行が可能になれば」と意欲を示した。
岩倉市長、公務復帰までの主な経緯
岩倉市長は、昨年11月7日に出張先の韓国で、心室細動による不整脈で倒れた。今年2月1日からのリハビリ出勤を経て、同14日に公務に正式復帰した。6月の市議会定例会後の同24日、体調不良で入院。同30日に一時退院したが、7月2日に再入院。副腎機能不全などと診断された。8月6日に退院し、自宅療養とリハビリを経て、同28日から公務に復帰。この間、市長職務代理者は2度設置し、期間は計139日間に及んだ。