「大いに屈する人を恐れ、いかに剛にみゆるとも、言動に余裕と味のない人は大事をなすにたらぬ」
初代の内閣総理大臣で、その職に四度就いた伊藤博文の言葉だ。外見や一時的な言動に惑わされず、真に強い人とは状況に応じて柔軟に対応できることだという。さらに、リーダーとして成功するには、余裕を持ち、思慮深く行動することが必要だとも説いている。
自民党の総裁選が告示された。27日の投開票まで選挙戦が始まったが、過去に例を見ない9人の候補者が立った。まさに「派閥解消」の効果の一つではあろう。1票を投じるのは党員や党の国会議員のみで、国民すべてが有権者ではない。
ただし、現状で自民党総裁が限りなく内閣をつかさどる首相に近いのだから、注目しないわけにはいかない。候補者が何を伝えようとしているのか。国家観や外交、防衛、経済、少子高齢化対策など政策面で耳を傾ける課題は多い。
国民の信頼を失った裏金問題への対応は候補者によって温度差がある。残念ながらその使い道まで踏み込んで解明しようという候補者は今のところいない。これからの論戦で本気度を確かめながら、伊藤博文の名言を実践でき得る人が誰なのかも確認したい。時間はある。(昭)