宿題 高橋(たかはし) 承子(しょうこ)

  • ゆのみ, 特集
  • 2024年9月12日
宿題
高橋(たかはし) 承子(しょうこ)

  とうとうわが家の裏庭にも鹿が現われるようになった。黒くて丸いビー玉のようなふんがそこいらじゅうに落ちている。トマトとナスは全滅。いつか熊も来るのではないかと不安である。異常気象で地球が狂ってきている。地上も海の中も動物の生態系が崩れてきている。大雨、地震、竜巻などで家屋が破壊され、人の命までも脅かされている。

   この異常気象は、何万年もかけて人類がつくった便利な暮らしに対する自然界からの代償なのだと思う。飛行機が飛び、車が走り、チーンと音が鳴れば食べ物が温かくなる。生活が楽になり、便利になっていく中で、自然が失われ、大気が汚染され、人間が苦しむことになるなんて、誰も予想していなかったに違いない。人間がそうなのだから、動物たちは知る由もなく、この現実に従うしかない。

   便利な冷蔵庫やテレビが世の中に普及したのは、この60年ほど。地球の歴史と比べると、ものすごく短かいが、その間に地球環境を大きく変えるようなことをした。実際に、北海道では絵本でしか見ることのなかった入道雲を、今は見るようになった。お盆が過ぎたら冷たい風が秋を知らせていたが、今は9月でも暖かい日がある。これまでの気候が、少しずつ変わってきている。変化に対し、人は対策を講じ、どうにか生き続けることができるが、動物たちはひたすら順応するしかないので、かわいそうだ。

   自然のおきてを破った私たちは、たくさんの宿題を抱えた。子どもたちや動物のために、答えを出さなければならないが、この地球という星のために何ができるだろうか。山から、わざわざ下りて来てトマトを食べる鹿を見た時、そんなことを思った。

  (みらいづくりハマ遊の友代表・苫小牧)

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