―胆振東部地震から6年を迎えた今の心境は。
「これまでを振り返るとさまざまな出来事があり、被災者の皆さんも長い年月だったと思う。4年前の4期目挑戦の際、険しい道のりであっても誰一人取り残さない災害復旧を目指す、と宣言をした。今も気持ちは変わっていない。厚真町にとって最優先事項であり、これから先も被災者が安心して暮らせる日常生活を取り戻す、あるいは支えていく覚悟でいる」
―この1年間で町内に変化はあったか。
「厚真川水系の直轄砂防事業が、3月2日に竣工(しゅんこう)式を無事終え、事業が完了した。幌内沢の農地が完全復旧を果たし、営農が再開できたことは非常に喜ばしい。3月に勇払東部の国営かんがい排水事業の直轄災害復旧事業が完成した。農業の環境として、被災以前に戻り、整ってきた状態で、大きな節目の一つを迎えた。災害復旧の視点で見ると、大きく前進した一年だった」
―復興に関して現状や課題は。
「復旧面では、インフラ系の災害復旧事業は相当の部分が完了した。ただ、治山事業は2024年度にようやく着手できたものもあり、全体が完了するまで多少時間がかかる。森林再生に関しても、全体で3230ヘクタールの森林が被害を受け、そのうち約1000ヘクタールを町と苫小牧広域森林組合で再生を果たそうとしている。26年までの集中期間に約660ヘクタールの植林を終わらせる計画で、残りの約400ヘクタールも引き続き再生を図る。一方、物価高で同じ事業予算を確保できても、事業量が確保できない心配もある」
―心のケアが必要な人に対しては。
「地震翌年の調査で、リスクを持つ方が15%弱存在していたが、今は7%ぐらい。道や町の臨床心理士、保健師も含め、専門家が個々にサポートしている状況が、改善につながったと思っている。地震後、別な外因でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する方もいる。これから先、1人でも悩んでいる方、不安に思う方をサポートしながら、改善を目指して粘り強く取り組みたい」
―今後、町をどう発展させるか。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)を進め、1次産業や子育て、教育環境と相まって、生活空間として磨きをかけることができる。さまざまな暮らし方を選択できる厚真町にしたい。国が進める2地域居住の政策展開を、町が目指す復興の一つの柱と重ねて、政策として整理をしたい」
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2018年9月6日に発生した胆振東部地震から6年を迎えた。大きな被害を受けた厚真、安平、むかわの被災3町の町長に現状や町の取り組み、課題などを聞いた。
(全3回、胆振東部支局・室谷実が担当します)