3日、上川管内の層雲峡の大雪山国立公園の登山道の見回りをしていた巡視員がヒグマに約百メートルにわたって後をつけられた。幸いヒグマが茂みに入り、最悪の事故は避けられた。様子は4日夜と5日朝にNHKテレビで紹介され、緊迫の追跡劇に多くの人がくぎ付けになった。
ヒグマはまだ若く、小柄。巡視員を追って足早に歩き続けた。巡視員はヒグマにカメラを向けながら、後ろ向きに歩き右手に持った撃退用のスプレーを見せ続けた。大声を出したり、背中を見せて逃げたりはせずに、落ち着いて対応していた。板を並べて杭に打ち付けた木道は見るからに歩きにくそうで「もしつまずいて転んだら」とハラハラさせられた。
北海道の「クマの季節」は今年も3月以降、札幌市などから始まった。4月末には根室市内で軽トラックに繰り返し体当たりするヒグマが、テレビ画面に何度も登場した。道は8月、来年度からの10年間で1万3290頭の捕獲目標を定めて、駆除を基本にしたヒグマ対策を進める方針を打ち出している。春のヒグマの、伸び伸びとした子育ての様子は見られなくなるが、ヒトの不用心にも問題があったことを忘れてはならない。10年間を、ヒトが野生動物との間に必要な礼節を学ぶ、有意義な時間としたい。(水)