来遊

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  • 2024年9月5日
来遊

  暦の上では既に秋を迎えている。二十四節気では、8月に立秋、処暑を過ぎて、あさって7日には早くも朝の草花に露がつくようになるとされる白露。気付けば空気は爽やかで、朝晩の気温も徐々に下がっており、街角のナナカマドも実が赤く色づき始めた。

   とはいえ気温の上ではまだまだ夏真っ盛り。夏が短いはずの苫小牧で、9月も夏日が続いている。苫小牧で育った記者にとって、暑さはほぼお盆で終わった記憶ばかりで、隔世の感すらある。取材先でも歓迎や戸惑いなどのさまざまな声を聞くが、秋の味覚を代表するサケにとって、温暖化の影響は深刻なようだ。

   北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場(恵庭市)によると、今年の全道秋サケ来遊予測数は約1703万匹。前年実績比24・5%減の厳しい数字だ。胆振を含むえりも以西海域は前年比20・7%増の約53万匹だが、そもそも昨年の同海域は歴史的な不漁だった。

   苫小牧沿岸の定置網漁は例年、9月1日の解禁とともに網を仕掛け、翌朝には初水揚げしていた。今年は資源管理のため操業開始を遅らせ、現時点では初漁獲は9日の見通しだ。海水温上昇に漁業者らも苦慮する中、サケが一匹でも多く、生まれた川に帰ることを願う。(金)

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