▽震災未経験職員を研修で訓練
安平町は8月29日、小中一貫の義務教育学校「早来学園」の7年生(中学1年相当)が行った防災キャンプに、若手を中心とした職員25人を研修として参加させた。大災害が発生した際、2023年4月に開校した同学園を避難所として活用できるよう開設手順を確認するとともに、胆振東部地震を経験していない職員から違う視点で意見を出してもらうことで、町の防災マニュアルに生かす狙いもあった。
研修では、同学園の大アリーナで、区画を分けるテープを床に貼り、段ボールベッドや大型テントを設置した。誤った方法でベッドを設営する職員が複数いたため、正しい作り方を学ぶことから始まった。様子を見守った防災学が専門の兵庫県立大学の木村玲欧教授は「避難所の設営は時間との勝負。職員は研修を続け、スキルアップをしてほしい」と総括した。
胆振東部地震から6年。町職員は毎年入れ替わり、震災対応を経験していない職員は、今や約30人に上る。研修のグループワークでは未経験の若手から「各エリアにリーダーを配置するべき」との意見が出されたが、町総務課は「被災すると、自分(若手を含め町職員)がリーダーにならざるを得ない。住民から答えを求められた時、適切な判断を下さないといけない」と十分な準備は整っていないことを指摘する。
▽町民センターを避難先に
町は今年度、早来町民センターの改修工事を進めている。終了後は3階に居室ができ、通常時はスポーツ合宿所、災害時は避難所として活用できるようになる。感染症やプライバシーに配慮した施設で、調理室や浴室も備えるので、宿泊時の利便性は高まりそうだ。
胆振東部地震後、町はさまざまな企業や団体と包括連携協定を締結し、災害時における資材の提供や、復旧作業をスムーズに進めるための支援を得られる手だてを講じた。災害後3日分の食料は家庭用備蓄、流通備蓄、町の備蓄で確保し、4日目以降は支援物資に頼ることを想定している。
そこでの課題は家庭用備蓄の充実と町民の防災意識の向上。町総務課は「町だけでは備蓄が足りず、自分の命は自分で守れるよう、家庭での備蓄もお願いしたい。防災意識レベルも人によって違うので、少しでも高めてもらう方法を考えたい」とする。
▽住民にも避難所開設のスキルを
地震後、町と関わり続けている木村教授は「意識だけでなくスキルの向上も必要」とし、「住民が段ボールベッドを組み立てられるようになると、町職員は別の仕事ができる。住民にも訓練を行い、エリアごとにリーダーを増やす取り組みが必要になっている」と助言する。