~次の災害に備え~ 上被災地視察と津波防災地域づくり 教職員の研修を継続 避難施設や備蓄倉庫建設へ

  • 特集, 胆振東部地震から6年
  • 2024年9月2日
~次の災害に備え~ 上被災地視察と津波防災地域づくり  教職員の研修を継続 避難施設や備蓄倉庫建設へ

  ▽教職員の被災地視察を継続

   8月8日、厚真町で行われた地元小中高校の教職員向け防災学習研修会で、町桜丘の崩壊斜面をバスで訪れた参加者16人から、驚きの声が上がった。6年前の胆振東部地震の発生後の状況が分かり、土砂のむき出しになった山肌が被害の大きさを物語っていたからだ。

   年月がたつにつれ、震災を知らない教職員が異動で増えてくる。各校が効果的な防災学習を続けていけるよう、町教育委員会では2019年から研修会を続けている。参加者は学んだことを勤務校の防災教育や大災害を経験した児童生徒たちの理解に役立てている。

   今年の研修会では、1993年7月に奥尻島で北海道南西沖地震を経験し、災害研究の道に進んだ東北学院大学の定池祐季准教授による講話も町総合福祉センターで行われた。定池准教授は、町内の崩壊斜面現場や慰霊碑を見ることで、被害の大きさや被災者の悲しみを知ることができると説明。「過去の震災を学ぶこと、今後の備えを考えること、両方必要なアプローチ」と研修の意義を述べた。

   ▽ハードとソフトの両面で防災対策

   同町はハード面とソフト面で防災対策を進める。2023年度は「町津波防災地域づくり推進計画」を策定。津波防災において行政、住民、事業者がすべき取り組みや避難体制の方向性をまとめた。ハード面では、25年度に浜厚真地区で津波避難施設(津波避難タワー)を設置する方針を明示した。今年度は町の備蓄品や今後災害が起きた際に大量に送られてくる支援物資を管理するための備蓄倉庫(鉄骨平屋建て、延べ床面積554平方メートル)を新町に建設する。

   ソフト面では、防災のリーダーとなる人材育成の強化、震災記憶の継承が、長期的な防災に必要と受け止めており、町総務課は「後世につなぐ作業はこれから」と話す。

   ▽住民が自主防災組織を設立へ

   町が7月下旬に浜厚真海浜公園の利用者に行った津波避難に関するアンケートでは、避難路の周知や防災への意識高揚などが必要と判明した。こうした中、自発的に防災に取り組む住民たちもいる。南町自治会は8月29日、町総合福祉センターでワークショップを開き、約20人が参加して自主防災組織の設立や、災害時に「誰が、いつ、何をするか」地域住民の役割を明確化するコミュニティタイムラインの作成を目指すことを決めた。

   同自治会の毛利通孝会長(66)「災害はいつあるか分からない。自主防災組織を立ち上げ、誰をどう避難させるか明確にすることが大切」と前を向いた。

  ◇   ◇

   2018年9月6日に発生した胆振東部地震から間もなく6年を迎える。被害の大きかった厚真、安平、むかわの3町は被災経験を踏まえ、次の瞬間にも起こり得る災害に向けて、被害を最小にする取り組みをしている。内容とそこから見えた課題を全3回で取り上げる。

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