戦禍の記憶

  • 特集, 記者コラム「風」
  • 2024年8月28日
戦禍の記憶

  戦時下の満州で壮絶な体験をした苫小牧市在住の高橋ミチさん(89)を取材し、15日の「終戦記念日」に記事を載せた。

   当時10歳の少女だった高橋さんは母親やきょうだいの手を取り、まちの人たちと共に山中を1カ月近くも逃げ回った。野宿を繰り返し、飢えに耐え、はだしで歩き続けた。おびただしい数の死体を見たが、「怖さは感じなかった」と振り返る言葉が逆に、戦争の異常さを物語っているように思えた。

   今も何か大きな音がすると、あの頃の記憶がよみがえるという。「あの経験があるからか、物がなかなか捨てられない」とも嘆いていた。

   戦後79年の時を経ても、当事者の記憶は決して風化しない。高橋さんが取材に応じ、悲痛な体験を語ってくれたのは、次の世代に「こんな思いをさせたくない」との切実な願いからだ。戦争を知らない世代として、体験者の声を受け止め、恒久平和の実現を目指す責任があることを改めて感じた。(河)

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