「北海道弁がなくなる?」。先月末に発表された総務省の人口統計の報道を見て、ふとそんなことを考えた。北海道に住む日本人は今年1月1日現在で昨年より5万人以上減り、503万9100人になったそうだ。減少は26年連続。減少数は12年連続で全国最多だった。「500万道民」の時代は間もなく終わる。
ちょうど40年前に出版された「北海道方言辞典」を書棚で探し、著者の石垣福雄さんの「まえがき」を改めて読んでみた。道南を中心に漁業者が渡道し始めたのは江戸時代という。明治になって東北6県の出身者を先頭に各地から和人が組織的に開拓入植し、先住民とのあつれきが強まった。言葉も問題だった。地名や山や川の名は先住民の言葉を借用したものの入植者同士の会話はさてどうする。「北海道は本州方言にとって安住の地ではなかった。本州から渡来した幾種類かの方言の生存競争の場。いたる所で多くの方言が死語となった。北海道は方言の墓場―」。結論は厳しいものだった。
猛暑が続く夏。新千歳空港で、大好きなばあちゃんの出迎えを跳ねて喜ぶ幼児の笑顔がテレビに映っていた。あずましくない。おばんです。はんかくさい―。不思議な温かさ、響きを持った北海道方言も人口減の壁には勝てないのか。(水)