私の本業は着物の着付け師である。苫小牧市民斎場で約30年、喪服の専属着付け師として仕事をさせてもらっている。近年はお通夜でも着物を着る人が少なくなった。私は、「着物は日本の民族衣装ですから、1人でも着物の方がいらっしゃると葬儀会場が引き締まり、全体の雰囲気が心のこもった式になるような気がします」と伝えている。
喪服は黒色無地で背の中心と左右の胸に家紋が付き、黒の帯と帯締めで弔事の装いとなり、亡くなった方への思いや感謝、悲しみを表している。そして弔問に来てくださった方へのお礼やお別れを表現しているのだと思う。
七五三、成人式、花嫁衣装なども、時代の流れ、男女の思い、子供への願いが込められている。形、模様、素材、色彩などが、これまでの時代の人々の思いを表している。世界でも類のない誇れる民族衣装だと確信している。
着物だけではなく、衣食住や普段の生活の中でも、小さな日本伝統文化に気づき、伝承していく年代になったと自負している。先人が培ってきた日本の宝を後世につないでいきたいと思うのは、私だけだろうか。
みらいづくりハマ遊の友が苫小牧市内で運営するコミュニティーサロン「ハマ遊の友」には、切り絵のおじいちゃん先生が遊びに来る。この先生は今年、市内の日本語学校で外国の若者に切り絵の素晴らしさを教えている。切り絵は着物染めの型紙として広まった職人技である。若者たちは日本の伝統文化や芸術を学べることにとても感謝し、熱心に勉強していると、おじいちゃん先生に教えてもらった。彼らは自国へ帰り、学習したことをどう伝達し、広げていくだろうか。
身近な文化や芸術を守る意識の薄い私たちだから、余計に外国の若者たちの意欲的な姿勢に圧倒された。改めて、深く考えさせられている。
(みらいづくりハマ遊の友代表・苫小牧)