苫小牧市宮前町にある錦岡樽前山神社には、江戸時代前期の僧の円空が造仏した権現像が奉納されている。大きさは高さ45センチ、幅26・5センチ、厚さ11センチ。オンコ(イチイ)の木でできており、背に「たろまゑ乃たけ」と刻まれている。
円空は美濃国(現在の岐阜県)の生まれ。1665年30代の頃に、12万体の仏像を作ることを願い全国を行脚した。現在発見されただけでも5000体を越え、北海道では道南を中心に約40体が確認されている。
仏像はどれも、なたで彫った荒々しい大胆なタッチが特長だ。勇武津資料館学芸員の武田正哉さんは「細部にとらわれない大胆さの一方で、長く民衆に親しまれてきた優しく慈愛に満ちた表情が魅力」と話す。
1799年、幕府の役人松田伝十郎が豊浦町の礼文華小幌の洞窟内で、4体の仏像を発見する。4体にはそれぞれ山の名が刻まれており、「たろまゑ乃たけ」は樽前山麓の権現社にまつられた。1921年頃に、現在の錦岡に社殿を移したと考えられている。
奉納品7点は、江戸時代本州から運ばれた「御宮形」や船首の飾りと考えられる「竜頭」、漁業関係者が奉納した「絵馬」など。当時の様子をうかがうことができる貴重な資料だ。
育み守ってきた財産
現在、錦岡樽前山神社では正月と6月の例大祭の時、円空の仏像を一般公開する。祭りは境内に出店が並び、お菓子のつかみ取りやカラオケのど自慢などが催され、子どもたちや地域の人でにぎわう。長年の年中行事として定着している。
時代が移り変わっても噴火や地震、病など災いは降りかかる。同神社役員の田原雄平さんは「代々神社に関わった人々が、苦労して守ってきた」と話す。境内には、地域の人が奉納した鳥居や灯籠などが点在する。円空仏に導かれ、人々が育み守ってきた財産だ。
(通信員 山田みえこ)
【メモ】
1979年12月28日指定
所在地…苫小牧市宮前町3の6の20(錦岡樽前山神社)
管理者…円空作樽前権現像保存協力会