四国の瀬戸内地方に住んでみて、驚いたことが幾つかあります。まず、瀬戸内海は非常に穏やかで、台風がめったに来ません。夏季はなぎが多く、白身魚が豊富です。タイやハマチ、オコゼなどは、その肉質が軟らかくおいしいです。
これに対して、高知県の方はまったく違います。読者の皆さまもご存じのように、高知では台風が頻繁に襲来し、海はそのたび荒れることが多いです。しかし、この荒波が海底から豊富な栄養を提供するのか、カツオやマグロなどの赤身魚が多く取れるのです。筋肉質で栄養価が高く、僕が食べた中でも特においしいと感じました。
また、北海道に戻ってみると、台風の影響はあるものの、寒流と暖流がぶつかる豊かな漁場が広がっていることに改めて気付きます。サケやマグロ、ブリなどの赤身魚が豊富に取れます。特に、寒冷な気候と清らかな水質が影響し、質の高い魚が育つのでしょうか。
瀬戸内の穏やかな海と白身魚、高知の荒波と赤身魚、そして北海道の豊かな漁場と赤身魚、それぞれの地域で育まれる海の幸は、その土地ならではの味わいを持っているのです。四国に住んでいた時は、休みがあればとにかく高知に魚と日本酒を求めて遊びに行っていた記憶が強く残っています。
日本そのものがおいしいものに囲まれていますが、こうした自然の恩恵を受けながら、僕たちは日々の食卓でその土地の特産品を楽しんでいるのだと今になると実感します。
(苫小牧工業高等専門学校准教授)