厚真町上野の農業小松岩雄さんは、とまこまい広域農業協同組合(JAとまこまい広域)の組合員約800人の中で最年長の98歳。今年も農業に従事し、コメやハスカップを生産している。故郷の同町で70年以上1次産業に携わり「厚真は良い所。人生は楽しいと思いながら生きている」とほほ笑む。
小松さんは、1926(大正15)年6月に厚真で生まれた。幼い頃から父親の農作業を手伝い、手作業で田植えや稲刈り、脱穀などを行った。45年6月には旧日本軍に召集された経験を持つ。
戦後、厚真に帰って農業を始め、大雨による河川の氾濫や天候の良しあしに苦労しながらコメなどを育ててきた。機械化される前の農業は農業者の手作業で作付けを行い、物資の運搬は馬が担っていた。作業には気力、体力を要し、日々馬の世話も必要だった。このため、72年と77年にトラクターを購入。後部に機械を取り付けて作業すると、効率は格段に上がったという。
冬の間は日高町で、建設会社の従業員として鉄道の線路設置工事に従事したこともある。「富川辺りで働いていた。たこ部屋(劣悪な宿舎)で過ごしたことが印象に残っている」と振り返る。
現在は8ヘクタールの畑を所有し、6・3ヘクタールを他の農業者に貸し、1・7ヘクタールの田畑でコメとハスカップを生産している。6月下旬のハスカップ狩りシーズンでは、町外から来た来園者と積極的にコミュニケーションを取り、厚真の名産品となっている紫色の果実や農業の魅力を伝えた。
健康で長生きする秘訣(けつ)として、「魚や肉をバランス良く取ること。ハスカップもおいしく食べている」と話す。現在の農業について、「今は衛星の活用で、現地に人がいなくても機械を動かせるようになった」と語り、「若い人は20ヘクタール以上の広い面積で作付けしており、安心して見ている」と若手就農者に期待している。