明け始めぬうちに

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年7月6日
明け始めぬうちに

  テレビ出演が始まり、初めに苦労したのが睡眠時間の調整です。朝の気象キャスターの一日のスタートは早く、現在出演している「おはよう北海道」の放送開始は午前7時45分ですが、起床の時間は未明の2時ごろです。できれば7時間は睡眠時間を確保したいので、出演の前日は夜7時ごろまでには床に就きたいところです。しかしながら、この時期はまだ外が明るく、寝付くのも一苦労です。

   「おはよう北海道」の出演前は、STVの情報番組「どさんこワイド朝」の気象情報を担当していましたが、その時は今より1時間早い未明の1時ごろに起床していました。未明に起床する生活を、かれこれ10年近く続けていますが、テレビ出演以外の曜日はシフト勤務のことが多く、睡眠を取る時間もまちまちなので、未明に起きる生活も慣れたようで、いまだに慣れないような気もします。

   8時手前の放送の割には、活動開始の時間が早すぎるように感じるかもしれませんが、放送までの数時間は、意外とあっという間に過ぎてしまいます。最も重要な作業は、放送で話す内容を整理することですが、コメント一つ作るだけでも熟考することがあるためです。

   例えば、この時期に特に多くなる、苫小牧の霧や霧雨のような局地的な現象についてですが、通常の天気図では細かく予想されることがありません。そのため、その日の気圧配置や風向き、詳細な気象予報資料などを確認して、霧や霧雨があるか予想して、コメントに入れるかどうかを決めているのです。

   その他にも、例えば晴れの予想になっているときに、青空が「広がる」という言葉を使ってもよいかどうか判断する際は、上空の湿度のデータなどから、雲の出方などを考慮し、多くの人が青空が「広がっている」と感じられるような晴れになる場合にのみ使用するよう心掛けています。天気予報で聴き慣れているような言葉一つでも、細かくデータを確認しながら選ぶようにしています。

   このような予報に関わるデータの確認をすることを、気象の業界では「予報資料の解析」などと言うのですが、放送前は天気図を含めた予想資料の解析や、放送で使う画面の確認や設定など、オンエアに関わる作業に加え、他の人が書いた気象原稿のチェック作業なども行っています。「予報資料の解析」も大事な作業なのですが、それよりも大事な作業があると先輩から教わりました。(続く)

  (気象予報士)

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