とにかく

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  • 2024年5月7日
とにかく

  「こどもの日」のある5月は子どもの数が話題になり、今年も「子どもの人口、43年連続減少」と報道された。毎年、子どもは減っているのに、児童相談所(児相)に寄せられる虐待の相談件数は増え続けており、対応が行き届かなかったために失われた命まである。

   そんなことになる背景には経験の浅い児相職員が多いことがあり、国は児相が各案件に応じる際に活用できる人工知能(AI)を使った全国共通システムの開発に取り組んでいる。AIが過去の膨大な虐待事例データと各案件を照合し、一時保護の必要割合や再発率を算出するもので、年度内に運用を始める予定だ。

   ただ、システムの導入が問題解決に直結するとは限らない。同様のシステムを先行導入した自治体の児相には、AIの予測結果を参考にして一時保護を見送り、子どもが亡くなった事例がある。児相職員が子どもの微妙な表情からくみ取った感情など、AIが学習する過去の虐待事例には落とし込まれていないデータもあるので万能ではないからだ。

   その意味で、AIの予測結果をどこまで参考にするかという課題はあるが、とにかく手を尽くし、子どもを守ることが最優先。借りられる力は借り、救われる心や命が増えることを望んでいる。(林)

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