アートで日常に楽しみを 樽前小児童との交流 作品作りに生かす 樽前arty+ディレクター 藤沢 レオさん(49)

  • 時代を生きて, 特集
  • 2024年5月4日
金属工芸家で彫刻家の藤沢さん
金属工芸家で彫刻家の藤沢さん
苫小牧市の文化公園アートフェスティバルで展示する銀のマンモスを試作=2015年
苫小牧市の文化公園アートフェスティバルで展示する銀のマンモスを試作=2015年
「樽前artyワークショップ」で児童に絵画制作やマーク作りを指導=2011年
「樽前artyワークショップ」で児童に絵画制作やマーク作りを指導=2011年
元気いっぱいの樽前小学校時代(右)=1983年
元気いっぱいの樽前小学校時代(右)=1983年

  苫小牧市樽前を拠点に活動する金属工芸家で彫刻家の藤沢レオさん(49)。市内でアート展を催す傍ら、母校でもある樽前小学校の行事にも長年参加し続けている。

   1974年に洞爺湖町で産声を上げた。苫小牧には77年の3歳時に、父親の転勤で樽前に引っ越し、幼少期を過ごす。

   樽前小学校時代は、とにかく好奇心旺盛な性格。木の実を拾っておもちゃを作るなど、この頃から工作が好きだったという。

   84年の小学校4年時に父の仕事の関係で転居したため、苫小牧西小学校に転校。その後、弥生中学校から苫小牧南高校へと進学。高校時代には美術部に入り、全国高等学校文化連盟などに作品を出展し、アートにのめり込んだ。大学は当時の道都大学(現星槎道都大)紋別キャンパス美術学部に進学し、苫小牧を離れた。

   大きな転機が訪れたのは96年の大学4年。授業の単位もほぼ取得して暇だったこともあって、友人と道内の建築物を巡る旅に出た。そしてニセコ(後志管内)を訪れた際に、鉄の芸術作品を手掛ける澤田正文さんの工房ギャラリーを見て衝撃を受けた。「鉄で表現された躍動感あふれる動物や鉄と木を組み合わせた家具など、鉄から感じる新たな生命力に『これだ』と思った」と振り返る。以降、澤田さんに弟子入りを志願。大学卒業後、2年ほど工房で働いて技術や感性を磨いた。

   99年に苫小牧にUターンし、錦岡で「工房LEO」を創立。2002年に大きな倉庫を貸してくれる人が樽前で見つかり、自然な流れで拠点を移した。彫刻や金属工芸を手掛け、1年に2~3回の個展を開いてきた。04年には若手芸術家グループ「樽前arty」を設立し、この頃から樽前小で作品展を開くなど、交流のきっかけを持ち始める。アートイベントやワークショップ、出前講座を重ね、13年に「樽前arty+」に名称変更した。

   樽前小の児童との出会いは芸術家としての人生に大きな影響を与えた。工房に遊びに来てくれたり、今年7月に完成する新校舎の校章を一緒に考えた。「児童の自由なアイデアは、人間を本来の初心に戻してくれるので、作品作りにプラスになる」と話す。

   学校側も藤沢さんの活動に全面協力。現校舎内を利用したアート展を開くことが多く、教室にガラスのオブジェを使った幻想的な空間をつくり上げたり、シイタケ栽培園に石の彫刻を展示したり、学校の日常感と作品を融合させた類を見ない演出で来場者の心をわしづかみにした。新校舎の設計は、学校側から「アート展にも合う雰囲気に設計した」と言われ、学校や地域に必要な存在となっている。

   藤沢さんは「アートを通して自然や日常、地域に多角的に目を向けることで、日常がもっと楽しくなるということを伝えられれば」とほほ笑んだ。

  (富樫陸)

  ◇◆ プロフィル ◇◆

  藤沢レオ(ふじさわ・レオ)1974年12月18日、洞爺湖町生まれ。NPO法人樽前arty+のディレクター。札幌市立大学でデザイン学部の常勤講師を務める傍ら、北大大学院文学院の文化人類学研究室修士課程で勉学にも励む。苫小牧市柏木町在住。

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