友達に足首をつかんでいてもらい、しゃがんだ体勢から「さあ、笠谷」の掛け声でぐっと伸び上がり、前傾姿勢を取る。最後に美しいテレマークを決め、「飛んだ、決まった」と叫ぶ。1972年、小学生だった。札幌冬季五輪の70メートル級ジャンプで金メダルを獲得した笠谷幸生さんのまねを、クラスの誰もがやっていた。先月、80歳で亡くなった笠谷さんのご冥福を心から祈りたい。
北の大地に大勢の外国人が訪れる一方、民族差別は厳然と残っていた。映画「アイヌの結婚式」が制作されたのは、その1年前。小山タエコさんが平取町二風谷で挙げたアイヌ民族古来の結婚式を記録した。映画の中で小山さんは激しい民族差別に対し「寂しいとか悲しいとか恥ずかしいとも思わないし、私は誇りにさえ思っています」と語る。先月、むかわ町穂別で上映会が開かれ、小山さんは「伝統を残してよかった」と話した。
憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない」と定める。9条の平和憲法に論議は集中しがちだが、平等がなければ平和もない。14条の意義を改めてかみしめたい。3日は憲法記念日。(吉)