受動喫煙、肺がんのリスク上昇 国立がん研チーム、メカニズム報告

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  • 2024年4月30日
受動喫煙、肺がんのリスク上昇 国立がん研チーム、メカニズム報告

  他人のたばこの煙にさらされる「受動喫煙」。がんや脳卒中、心筋梗塞などさまざまな疾患のリスクを上げることが、国内外で積み重ねられた研究結果を基に確認されている。このうち肺がんのリスクを上げるメカニズムを、国立がん研究センター(東京都中央区)などのチームが4月、発表した。

   チームは女性の肺腺がん患者約400人について、がんのゲノムを分析。自身は喫煙していないが10歳代か30歳代で受動喫煙があった女性、受動喫煙がなかった女性、自身が喫煙していた女性の3群に分けて比較した。

   非喫煙者で受動喫煙がなかった女性に比べ、受動喫煙があった女性は、遺伝子変異の数が1割ほど多かった。また、毎日受動喫煙があった女性は、遺伝子変異を誘発する「APOBEC型変異」の比率が2倍程度多かったが、喫煙者にはほぼ見られなかった。研究チームの河野隆志ゲノム生物学研究分野長は「腫瘍ができた後、これらの変異が悪性化させている可能性が考えられます」と分析した。

   会見に同席した片野田耕太データサイエンス研究部長は「受動喫煙と肺がんの関係を世界で初めて証明したのも、がんセンターの部長でした」と話し、こうした研究を世界のたばこ産業が否定してきたと振り返った。

   当時の部長は1981年、大規模調査を基に、喫煙者の夫を持つ妻の肺がん死亡リスクが高いと英医学誌に発表した。だが喫煙の有無が自己申告だったなど研究の限界もあり、「たばこ産業から激しいバッシングを受けました」。

   たばこ産業側が、実際には存在しない計算ミスが論文にあると批判したり、自己申告に虚偽が多かったとする誤った論文を発表したりしたことが、その後公開された米たばこ会社の内部文書などから分かっている。

   一方、受動喫煙の害については国内外から研究報告が重ねられた。2000年代には国際がん研究機関などで認められ、国内でも16年の国のたばこ白書に記載された。片野田部長はこうした歴史を踏まえ、「今回は非常に意義深い研究結果です」と話している。

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