米国の調査会社ユーラシア・グループは1月、「ことしの世界の10大リスク」として「アメリカの分断」を筆頭に挙げた。11月の大統領選に向けた政治的分断が地政学的な不安定さを世界にもたらすと指摘。2番目のリスクはイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く「中東情勢」、3番目は「ウクライナ情勢」で実際、それぞれ緊迫度を増している。
リスクの背景には、社会制度や歴史認識を巡る「カルチャーウォー」(文化戦争)もあれば、報復の連鎖もある。宗教上、重要な土地を巡る争いでは大国の介入が問題を複雑化させ、和平交渉が難航する。世界の軍事費は9年連続で増加し、最高額を更新し続けているという。その果てに明るい未来は見通せない。
気になるのは中道、穏健派に比べ両極端の声が強まっていること。国際問題に限らず争い事の多くは相手も同じ前提に立つと決め付けるところから始まる。違いと向き合わなければならない。なあなあでひとときの安心感は得られても火種はくすぶり続ける。多様性の時代といわれるが果たして違いを認め、尊重し合うことが当たり前の世界に少しずつでも近づいているのだろうか。現実はまだまだ共生社会からは遠いことを認識するところから始めなければならない。(輝)