【カイロ、ワシントン時事】イスラエル軍が19日未明にイラン領内を攻撃したと伝えた米メディア報道から1日が経過する中、双方共に表立って攻撃があった事実は認めていない。「報復の連鎖」による本格的な衝突は避けたい考えとみられ、緊張緩和に向け慎重な対応に努めている。
イスラエル軍はイラン攻撃の報道が出て以降、公式な反応を示していない。イラン側も、ドローンを撃墜したことなどは認めているが、名指しでのイスラエル非難は控えている。イラン高官はロイター通信に対し、イスラエルに報復攻撃する計画はないと語った。
欧米やイランのメディアによると、イスラエルはイラン領内からドローンを飛ばし、中部イスファハン近くの空軍基地を狙ったもようだ。だが、防空システムが作動し、ドローン3機を撃墜。イスファハン州ナタンズの核関連施設を含め、被害はなかったという。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は19日、バイデン米政権が各省庁に対し、攻撃に関し公式な発言をしないよう指示したと報じた。ジャンピエール米大統領報道官は同日の記者会見で「中東の報道に大きな関心があるのは分かるが、現時点でコメントは何もない」と口を固く閉ざした。
ブリンケン米国務長官は19日、イタリア南部カプリ島での先進7カ国(G7)外相会合閉幕後の記者会見で「報道については話さない」と強調。「米国はいかなる攻撃作戦にも関わっていない」と関与を否定し、「G7は緊張緩和と衝突回避を重視し、取り組んでいる」と説明した。
規模や被害程度から見ても、イスラエルの反撃は「限定的」(米メディア)だったとの見方が強まっている。イスラエル、イラン、米国の動きからは事態の沈静化を図る各国の思惑が透ける。