次列風切の再生 満を持してヒヨドリをリリース

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2024年4月19日
次列風切の再生 満を持してヒヨドリをリリース

 つい先日、約2カ月のリハビリ期間を経て、1羽のヒヨドリ(スズメ目ヒヨドリ科)が無事に自然復帰しました。

 まだ寒さ厳しい1月下旬、道路で飛べずにいたところを保護されたヒヨドリ。人工物への衝突か他動物による襲撃か、直接的な原因は不明ですが、左の翼の次列風切(じれつかざきり)と背中の一部の羽が抜け、肌が露出している状態でした。

 次列風切とは、翼の後縁を構成する羽の名称で、鳥類が空を飛ぶために極めて重要な、風切羽(かざきりばね)の一部です。風切羽は、飛翔(ひしょう)するために不可欠な「推進力」を生み出す初列風切(しょれつかざきり)と、「揚力」を生み出す次列風切があり、この二つの力があって初めて、鳥類は空を飛ぶことを可能にします。しかし、このヒヨドリは、揚力に関わる次列風切がすべて抜けていたのです。

 鳥類の主要な羽は、種によって枚数がある程度定まっており、ヒヨドリの次列風切は片翼で6枚。体中を覆う数え切れないほどの羽の枚数に比べたら、わずかに思われるかもしれませんが、この6枚を失うだけで飛ぶことができません。実際に保護直後、飛翔力を確認しようとしましたが、ヒヨドリ自身は潔く飛ぼうとしているにもかかわらず、かろうじて前進するものの、すぐに下降し着地してしまいました。骨折や脱臼のように明らかな骨格でなくても、飛翔に重要な羽を失うだけでも飛ぶことはできないのです。

 こういった際は、ヒヨドリの羽の再生を待つのみ。羽の伸長には多くのエネルギーを要するため、体力を落とさぬよう安静かつ十分な餌を与え、環境を整えます。幸いにして、保護からひと月がたつ頃には、次列風切も背中の羽も元の長さまで伸び、室内を自由に飛び回れるほどに回復しました。しかし、まだ外は雪が多く残る季節。さらにひと月ほど療養してもらい、春の風を感じる穏やかな日に、満を持してリリースとなりました。

 羽の一部を失うという困難な状況でも、時間をかけて、再び力強い羽ばたきを取り戻したヒヨドリ。これからまた続く厳しい自然界での日々を、どうか懸命に生き抜いてもらえたらと願いながら、見送ったのでした。

 (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

こんな記事も読まれています

    •          苫小牧民報創刊75周年記念講演             豊丘村制施行70周年記念講演 入場無料 三國清三シェフ 「70歳からの挑戦」   講師 三國 清三 氏 日時 6月7日(土) 令和7年 開演15時

    • 2025年7月22日
  • テストフリー広告

       苫小牧民報社創刊75周年記念講演会 入場無料  【講師】アルピニスト 野口 健氏  【演題】富士山から日本を変える  ~山から学んだ環境問題~  日時・会場・申込・問合せブロック  2025年(令和7年)8月9日(土)

    • 2025年7月18日PR
    テストフリー広告
  • テストフリー広告

       <!DOCTYPE html>  <html lang=”ja”>  <head>  <meta charset=”UTF-8″

    • 2025年7月18日PR
  • TEST
    • 2025年7月15日
  • TEST
    • 2025年6月26日
ニュースカレンダー

紙面ビューアー