がん検診は早期の段階でがんを発見し、治療によってがん死亡率を減少させることを目的とする。一方、検診を受ける利益より不利益が上回る場合も。本当に必要な検診とは何か、国立がん研究センターがん対策研究所(東京都中央区)検診研究部の中山富雄部長に聞いた。
▽偽陰性、過剰診断
現在、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸(けい)がんの五つのがん検診が推奨されている。「これは科学的根拠を基に検査方法や対象者、検査間隔が検討されたもので、住民検診や職域検診のオプションとして行われます」。その他のがん検診の利益、不利益のバランスは現時点で分かっていない。
不利益には▽がんが小さ過ぎたり、見つけにくい場所だったりして、がんを見逃す「偽陰性」▽がんがないにもかかわらず、がんがあるかもしれないと診断される「偽陽性」▽検診で見つかっても進行がんにはならず、本来手術などの治療が不要であった可能性がある「過剰診断」だ。
「あえて見つけ出す必要のないがんを見つけて治療するのは、身体的、精神的、経済的な負担を増やすことになりかねません。実際にがんと診断したら、進行が遅く寿命に影響しない可能性があっても、治療しないことを選択するのは難しいです」
がん検診は健康な人を対象とするが、出血などの「偶発症」が起こることもあり、まれだが死亡例も報告されている。
▽リスク別の検診
こうした不利益を減らすためには、一人一人のがんのなりやすさ(リスク)によって、検診の間隔を変えるやり方がある。現在、厚生労働省でリスク別のがん検診の導入に向けた検討が進んでいる。例えば、胃がんはピロリ菌や胃粘膜の萎縮の有無などで胃がんのリスクが異なる。子宮頸がんでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染の有無などが該当する。
「がん検診を受けることの利益と不利益を比べ、本当に必要なものを選択できるように、一人一人が健康への意識を高めることが大切です」と中山部長は語る。
(メディカルトリビューン=時事)
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