全道各地で読み聞かせボランティアをしてきた松嶋珪子さん(86)が白老町内の活動拠点として町大町3に私設文庫「みみの館」を開館して4月で半年がたった。町民に親しまれる場になるよう、読み聞かせのほか、イベントも随時実施している。14日にはミニコンサート「音楽と絵本の調べ」を開き、町内外から訪れた約50人を楽しませた。
松嶋さんは子どもの声がよく聞こえるように―との思いから「みみ」を愛称とし、1996年から函館市や札幌市で読み聞かせ活動を展開。苫小牧市では2019年、王子町に私設文庫「宇宙船みみ」を開設している(コロナ禍で休館し、昨春再開)。
白老には23年、夫婦の安住の地として移住。町民の要望に応えて絵本や児童図書500冊を用意し、同年10月に「みみの館」を開設した。隔週土曜の午後1時から無料開放して本と自由に親しむ場を提供し、松嶋さんは来館した親子などの求めに応じて絵本を読み聞かせている。このほか、夫で医師の喬さん(87)が経験や知識を生かして折々に健康サロンを開催しており、「まちの図書館」「町民の居場所」として町内外で認知が広がりつつある。
松嶋さんは「子どもも大人も気兼ねなく立ち寄れる場でありたい」と語り、今後について「地域の方たちのお力添えをいただきながら一緒に歩んでいきたい」との思いを胸に前を向く。
ミニコンサートでは、松嶋さんと長年読み聞かせ活動をしてきた東京都在住のソプラノ歌手小倉真理子さんとピアニストの河野幸恵さんが、シューベルトの「アベマリア」など11曲を歌唱、演奏。松嶋さんの読み聞かせに河野さんが伴奏を添えたり、小倉さんが絵本の解説をしたりして和やかに進んだ。
長女の咲茉さん(5)が生後4カ月の時から苫小牧や白老の文庫に通っている三田村沙衣さん(32)=苫小牧市啓北町=は、「みみの館は、みみさんの温かい人柄が感じられるアットホームな場所」と語った。
古くからの友人で、活動を応援する吉田裕二さん(74)=同豊川町=は「松嶋さんは人との出会いを大切にする方で、住民の居場所を私財で提供することを『恩返し』と言っていた」と語る。白老町本町の中野嘉陽さん(83)は「文化・健康サロンを個人で運営する人を私は他に知らない。町民として支え、支えられて一緒に成長していきたい」と話す。松嶋さんが親友とする町大町の相吉京子さん(83)も「無償の愛を地域に届けてくれた。このまちに来てくれて本当にうれしい」と笑顔をほころばせた。