議員の成り手不足対策を話し合ってきた全国町村議会議長会(会長・渡部孝樹厚真町議会議長)の有識者検討会は8日、報告書を公表した。町村議選の無投票の増加ペースがこのまま続けば、2023年5月から27年4月までの4年間で、全体の3分の1を超える34・1%の団体で無投票になる可能性を指摘。無投票や定数割れなどとなった議会については、成り手不足問題に関する検証組織を立ち上げるといった対策の実施を促している。
議長会が、この問題に特化した検討会を設置して対策を議論したのは初めて。渡部氏は記者会見で「いま歯止めをかけなければ地方自治や民主主義の危機的な状況が到来すると言っても過言ではない」と述べた。
町村議選の一般選挙で無投票となった割合を見ると、19年4月までの4年間は204団体(選挙実施932団体)で全体の21・9%だったが、23年4月までの4年間は254団体(同926団体)で27・4%へ上昇。23年4月までの4年間に、候補者数が定数を1上回って辛うじて無投票を回避したのは32・3%に当たる299団体で、無投票と合わせると6割近くを占める。
報告書は、成り手不足が深刻化すると、議会の意思決定や政策立案、行政監視の機能に影響を及ぼし、議会の存在意義や首長との二元代表制の趣旨が損なわれると指摘。地方自治の弱体化は都道府県や国にとっても危機だとして、「幅広い協働による対策が不可欠」と訴えた。
対策では、成り手不足への対応と女性議員の増加の二つの観点から提言。各議会には、検証組織の立ち上げのほか、立候補を検討する人向けに講座を開くなどして後押しするといった取り組みを求めた。町村全体としては低額な議員報酬の改善、都道府県は成り手不足対策に当たる町村議会への財政支援、国は議員の厚生年金加入を通じた待遇改善などが必要と明記した。
女性議員の増加に関しては、議会としてハラスメント対策を徹底することが欠かせないと強調。国には、女性地方議員の活動内容などを紹介する「ロールモデル実例集」の作成を要請した。