オッペンハイマー

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  • 2024年3月28日
オッペンハイマー

  原爆の父として知られる米国の科学者を取り上げた映画「オッペンハイマー」が公開前から話題だ。「インターステラー」やバットマンのダークナイトシリーズなどで映画ファンをとりこにしてきたクリスファー・ノーラン監督の最新作だけに、いやが上にも期待が高まる。

   第2次世界大戦中、原爆開発のマンハッタン計画を主導したロバート・オッペンハイマーの葛藤を描く。米国で伝記映画としては空前のヒットを記録しアカデミー賞7部門を受賞したが、日本での公開は見送られてきた。広島、長崎への原爆投下に伴う悲惨なシーンが登場しないなど日本での原爆の取り上げ方とのギャップや認識の違いが指摘され、原爆を想起させるSNS投稿からそれらを垣間見せるバーベンハイマー騒動もあった。

   日本は唯一の戦争被爆国でありながら、安全保障で米国の核の傘に依存している。来年は戦後80年。核廃絶を訴えてきた被爆者の思いを受け継いでいくことの意味がこれまで以上に問われており、その問題を見詰め直す機会にしたい。ノーラン作品は題材を越え上映時間が長めで、本作は過去最長の3時間。鑑賞の際は仕事後の睡魔などに襲われないよう体調を万全にして臨みたい。米国に8カ月遅れで、あす29日全国公開される。 (輝)

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