東京の不便さ

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年3月23日
東京の不便さ

 「今のストレスってなに? お店も情報も少ない穂別の暮らし?」などと東京の友人に聞かれると、私はこう答える。

 「そうね、今も時々、東京の病院で診療してるんだけど、そこで感じる不便さかな」

 すると友人は「東京が不便ってどういうことなの?」と目を白黒させる。でも、本当にそう思うのだ。

 穂別で働く前の何年か、私は東京の大学の総合診療科というところで”修行”をさせてもらった。精神科の経験しかなかったので、内科や救急対応など幅広く知識や技術を身に付けるためだ。実は今も週末は時々そこに顔を出し、勉強を続けている。

 総合診療科には、「何科を受診すればよいのか分からない」という患者さんが時々やって来る。お話を聞いて体の診察や検査をし、「この病気かな」とだいたいの診断がついたら、より専門的な科や病院に紹介することになる。

 ところが、東京の病院はどこも忙しいのか、「きょうは無理です」と断られることがよくある。その場合は、「そこをなんとか」と交渉したり、別の病院を探したりしなければならない。それがとても大変なのだ。「どうして診てくれないんだろう。冷た過ぎるじゃないか」とちょっとイライラしてストレスを感じることも多い。

 では、穂別ではどうか。もちろん、この診療所でも「これはここでは無理だ。早く専門の病院に行ってもらわなくては」ということがある。その場合は、苫小牧市立病院や王子総合病院、その他の苫小牧市内の病院や専門クリニックに紹介することになるのだが、そこで「無理です」と断られることはほとんどない。どんなに忙しくても、どのドクターも「分かりました。なんとかします」と引き受けてくれる。

 穂別の状況をよく分かってくれているのだろう。機会を逃さずに適切な医療が受けられるのは患者さんにとってもメリットがあるし、もちろんこちらのストレスもない。「苫小牧でしっかり診てもらって、落ち着いたらまた穂別診療所に戻ってきてね。その後は引き受けるから」と患者さんを送り出し、「本当にありがたい」と感謝しながら次の患者さんに向き合うことができる。

 ああ、東京の医者たちにも、このストレス・フリーの医療連携を味わわせてあげたいな。そんなことを思いながら、きょうも元気に診療している私は、かなり幸運な医者なのかもしれない。

 (むかわ町国保穂別診療所副所長、北洋大学客員教授)

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