鹿児島県屋久島沖で昨年11月に起きた米軍輸送機オスプレイ墜落事故で、在日米軍が停止していたオスプレイの飛行を再開してから21日で1週間となる。日米両政府は部品の不具合が特定されたことで安全対策を講じられると強調するが、なぜ特定の部品に問題が発生したのか根本的な原因は不明のままだ。動力システムに致命的な破損が生じる可能性を完全に排除したと言い切れない懸念がある中、沖縄県では再開初日から市民の頭上を飛行した。
◇対策は「リスク軽減」
日米両政府によると、米軍オスプレイを巡っては、過去2年間で4件の墜落事故が発生し、20人が死亡した。うち機体の不具合が原因と判明したのは屋久島沖事故を含め2件。米軍は運用停止措置の解除について「安全な運用再開に寄与するリスク軽減措置の策定を行った」とした。あくまでもリスクの軽減で、抜本的解消とは言い難い。
米軍当局は取材に「事故の根本原因はまだ分かっていない。運用再開の決定は安全を優先する細心の注意を払ったデータに基づくもの」などと回答した。米メディアは「機体残骸が1カ月間水没し、腐食したことが事故調査を困難にした」との当局者の見解を報じた。
米国では2022年、プロペラに動力を伝えるクラッチが突然離れ再結合する「ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」と呼ばれる不具合でオスプレイが墜落した。事故調査報告書は「操縦者に過失はなく、事故発生を予測、防止することはできなかった」と記述。米軍当局は「HCEの最終的な根本原因はまだ検証されていないが、絞り込んでいる」とした。
◇回復機能作動せず 屋久島沖事故はHCEの発生はないとされたが、双発のオスプレイには片方のエンジンが停止しても、残りのエンジン出力を分配して、飛行を維持する「ICDS」と呼ばれる機能が備わっている。しかし、年の墜落事故ではICDS自体が故障し、作動しなかった。
普天間飛行場(沖縄県)で14日に飛行を再開した米海兵隊は「新たなリスク管理措置に準拠した計画を適切に実行している」とコメントした。木原稔防衛相は会見で「一定の原因が分かり、安全対策が取られた場合に運用を再開するのは、あり得ることだ」と述べた。
米軍はオスプレイを普天間飛行場に海兵隊用を24機、横田基地(東京都)に空軍用の5機を配備。14機を保有する陸上自衛隊は、木更津駐屯地(千葉県)に暫定配備し、一部は目達原駐屯地(佐賀県)と高遊原分屯地(熊本県)に駐機している。陸自は木更津から飛行を再開する。