(中)街景に非具象の描写

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2024年3月16日
(中)街景に非具象の描写

  鹿毛正三は美術研修のため48歳だった1971年に3カ月間、50歳となった73年に2カ月間渡欧し、フランス・パリを中心に各地を巡っています。自然景観を描いた画家としてのイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、”街景”の作品もまた見逃せません。かつては非具象(描く対象のかたちが具体的ではない表現)の作品も描いていたという鹿毛ですが、73年の渡欧の後、具象の画家としての決意を新たに、過去に描いた非具象の作品はすべて自ら焼却したといいます。

   鹿毛のかつての作品を今見ることはできませんが、街の景色を描いたものの中には、直線的で幾何学的な形や、色の配置への関心が強く表れ、かつての非具象の作品を思い起こさせるような描写も残っています。美大を卒業後、一時親類を頼り金沢に滞在していた頃の貴重な初期作品にもその傾向が見て取れます。

  (苫小牧市美術博物館主任学芸員 立石絵梨子)

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