このたび、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターの展示ホールに、哺乳類の剥製が設置されました。これは2013年より苫小牧市美術博物館と当センターとの共催事業で始まった「サテライト展」の一環で、ウトナイ湖や勇払原野で見られる生き物について、同博物館で収蔵されている剥製を学芸員の方に選定、設置いただいています。これまでは、主に鳥類でしたが、今回は初めての哺乳類、エゾヤチネズミ(齧歯=げっし=目キヌゲネズミ科)とイイズナ(食肉目イタチ科)の剥製です。
エゾヤチネズミは北海道全域に生息しているネズミで、シベリアから朝鮮半島にかけて広く分布するタイリクヤチネズミの亜種です。草食性で植物繊維を多く食べ、果実や種子、トドマツなどの木の樹皮を餌とする一方で、猛禽(もうきん)類や哺乳類などの大切な餌となる生き物です。
イイズナも北海道に広く分布しており、イタチの仲間では世界最小です。その小さな体の割には気性が荒く、ネズミ類や小鳥などを餌としますが、時には自分の体より何倍も大きな動物を襲うこともあります。また、夏季は背側の褐色と腹側の白色の毛をまといますが、今回展示しているのは、全身真っ白の冬毛の個体です。
いずれも、身近に生息している哺乳類ではありますが、当センターに勤めて20年近くたつ私も、ウトナイ湖周辺では生きている姿をほとんど見たことがありません。冬季であれば雪上に足跡を残してくれることがありますが、そういった時でしか、なかなか存在を実感できません。
しかし、こうして剥製を間近で目にすると、生き物たちの実際の大きさ、爪の先や毛の一本一本などの細部までじっくり観察することができ、自然界で暮らす姿に想像を膨らますことができます。また、こういった生き物がいるからこそ、豊かな生態系が維持できることを改めて学ばせてもらうこともできるのです。学芸員の方に作成いただいたパネルも合わせて展示していますので、この機会にぜひ、当センターのサテライト展をご覧いただけたらと思います。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)