日本大学アメリカンフットボール部員の違法薬物事件を巡り、日大は31日、大学法人としての対応に関する第三者委員会の調査報告書を公表した。法人内部での情報伝達の遅れに加え、内部統制や危機管理の知見の欠如を指摘。林真理子理事長らが規定に反して理事会への報告義務を果たさなかったことなどを挙げ、ガバナンス(組織統治)が「機能不全に陥っていた」と厳しく評価した。
調査は電子メールや議事録などの収集のほか、林氏ら20人以上の関係者にヒアリングして実施。違法薬物についての昨年10月以降の保護者からの情報や、大麻使用を申告した部員への対応などを個別に検証し、93ページに及ぶ報告書にまとめた。
報告書では、特に問題視されていた、元検事の沢田康広副学長が部の寮で植物片を発見してから警察に連絡するまで「空白の12日間」があったことについて、「法人の信用を著しく失墜させた最大の原因」と指摘。犯罪になる可能性にも触れ、「立件可能性が低ければ大きな問題ではないという誤った判断に基づいていた」と批判した。
さらに、沢田氏が秘密保持の名目で情報を独占した結果、「早期の危機管理態勢の構築を妨げ、意思決定の誤りにつながった」と判断。アメフト部の活動停止処分に関しても、沢田氏から適切な情報提供がされず、わずか5日で活動再開を認めるなど処分解除の判断を誤らせたことは「極めて重大」とした。
林氏についても、沢田氏から報告を受けて以降、調査指示を出さず、理事会などに報告しなかったことを挙げ、「著しく不適切」と評価した。
報告書では、一連の対応の「最大の問題」として「立証されていない事実の矮小(わいしょう)化や、情報の都合のいい解釈、自己を正当化した姿勢」に言及。林氏らがこうした沢田氏の説明や見解を批判的に検証せず許容した結果、「社会から大きな批判を受けることとなった」と結論付けた。
理事長や学長の選任手続きについても、能力や経験の評価など合理的なプロセスを経たか検証の必要性もあるとした。再発防止に向け、規定に基づく報告などコンプライアンスの徹底や、権限と責任の所在の明確化、理事会自らが監督のために情報を入手する仕組みの構築などを求めた。