鵡川など3漁協が今季のシシャモ漁を見送った。29年ぶりの休漁。コラム子は早い時期に取れる脂の乗った雄をあぶって食べるのが好きで、軒先のすだれ干しを買うために毎年秋、むかわに行く。今季、加工業者は他の道産もので対応しているが、やはり客足は鈍いという。影響は深刻だ。ただ、今回の生産者の重大な決断は応援団の一人として支持したい。
シシャモ漁は晩秋、1カ月と少し操業し、魚の遡上(そじょう)が活発になる前に終える。川で産卵する親魚を確保するために。豊漁を祈るアイヌの儀式が終わり、木枯らしが吹き付ける11月のしけの日を地元の漁師らは「ししゃも荒れ」と呼んだ。シシャモの遡上が本格化する吉兆と、むかわの人に聞かされた。春、川でふ化した稚魚は海に降りて成長し1年半後、生まれた川に戻って来る。
シシャモは地域の文化と経済の要。その影響を覚悟してなお休漁を選んだのは、今が正念場だからだ。町はこの秋、資源再生に向けた研究会を発足させた。河川管理者を含む行政は連携し原因究明と対策に注力してほしい。道東ではまとまった量が取れている。ならば高い海水温ばかりが問題とも言い切れまい。産卵、ふ化し、稚魚が降海するまで育つための川の環境はどうなのか。気になる。(司)