今秋冬、新型コロナウイルス感染は新たな変異株の出現などにより再拡大が懸念されている。独協医科大学(栃木県壬生町)医学部微生物学講座の増田道明教授は、新型コロナとの共存を見据える時期に来たと指摘する。
▽変異重ね共存へ
増田教授は直近の状況について、「重症例、死亡例の発生は抑えられています。しかし、風邪を起こす従来のコロナウイルスは冬場に流行するので、この秋冬は感染者が増える可能性も高いでしょう」との見方を示す。検査技術の進歩もあり将来的に感染者をゼロにするのは不可能に近いという。
少なくとも4種類の風邪コロナウイルスが動物を起源とし、「人への感染」「肺炎の流行」「変異」を経て、何十年、何百年と人間と共存してきた。
「現在でも、風邪コロナウイルスで肺炎になったり亡くなったりする人がいると思われますが、社会的には問題視されません。新型コロナも変異を繰り返すたびに病原性を弱め、人間と共存するすべを身に付けたように見られます。一律の感染対策から次のステップに進むべき時期ではないでしょうか」
▽互いの姿勢を尊重
「怖がり方の多様性を認めることです」と増田教授。自分には重症化リスクがあると思う人はマスク着用やワクチン接種など、慎重な感染対策を考える。そうでない人は、新型コロナだけを特別視せず、感染症全般に備えた健康管理に努める。
例えば食事、運動、睡眠、休息といった生活のリズムを整えると、免疫力の強化や、新型コロナの重症化リスクとなる基礎疾患の予防にもつながる。発熱や喉の痛みなどがあれば、感染源とならないよう外出を控える。
ワクチン接種については、その効果、年齢、基礎疾患といった重症化リスク、副反応などについて信頼できる主治医に相談して決める。
「大切なのは、入念な対策をやゆしたり、対策を取らない人をむやみにとがめたりしないこと。一人ひとりの『怖がり方』を互いに尊重できるようになったときが、真のウィズコロナと言えるでしょう」と増田教授は話している。
(メディカルトリビューン=時事)
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