年を重ねていくと気になるニュースがある。「認知症」に係るさまざまな情報だ。普段は元気で何の変わりもないが、時間の経過とともに、ゆっくり、ゆっくり進行。家族の顔と名前が一致しないことも多くなり、最期をみとる前には他人のようになってしまう。切ない期間を経験したから「自分も」の思いを描く。
そんなアルツハイマー病に特化した新薬「レカネマブ」が日本で正式に認証された。患者やその家族にとって期待感は大きいが、処方には条件や費用の問題なども横たわるようだ。
この薬は症状の進行を遅らせる効果が持続するのが特徴だ。ただし、対象は軽度や早期の人。そこを見極めるために、費用のかかる特別な検査を受けなければならない。専門医も必要だ。こうした検査を受けられるのは大きな病院で、地方で誰でも簡単には受けられない。投薬も点滴の持続が不可欠で費用もかさむ。
ただ、新薬の浸透には段階が必要と専門家も指摘する。2025年に認知症患者が5人に1人という厚労省の推計がある。家族を含め、心身ともに大きな負担がかかる病気への対応。誰もが簡単に薬を手にできるまでには時間がかかるのだろう。それでも、この夢の新薬に期待をせずにはいられない。 (昭)