政府は18日、観光立国推進閣僚会議を首相官邸で開き、観光客の急増で住民生活や自然環境などに悪影響が及ぶオーバーツーリズム(観光公害)防止に向けた対策パッケージを取りまとめた。混雑緩和やマナー違反防止を実践する全国20地域を国が選んで支援するモデル事業を実施。交通機関の混雑状況に応じた運賃設定を促すほか、タクシー不足への緊急措置も盛り込んだ。
岸田文雄首相は会議で「住んで良し、訪れて良し、受け入れて良しの持続可能な観光地づくりに向けて、政府一丸となって精力的に取り組んでほしい」と閣僚に指示した。パッケージは政府の総合経済対策に反映させ、2023年度補正予算案への計上も視野に入れる。
モデル事業では、参加地域の自治体や観光関係事業者、住民で協議し、各地の実情に応じた観光公害抑制の計画を策定。計画に基づく取り組みを行う際、国が費用補助や規制緩和の面で支援し、先駆的な事例として全国展開を図る。早ければ今年度中にも開始する。
これとは別に、各地域の参考にしてもらう観光公害対策の事例集や指針を今年度中をめどに策定。マナー違反を防ぐための条例制定や、訪問時に徴収する「入域料」を導入する際の留意事項などを盛り込む。訪日客向けにマナーを紹介する統一絵文字(ピクトグラム)も作り、世界的な旅行ガイドなどを通じて周知する。
交通機関の運賃に関しては、駅や主要観光地などを結び多くの観光客が利用する「急行バス」で自由に設定できる制度を創設。通勤ピーク時に鉄道運賃を高くできる仕組みを、観光による混雑でも活用する。
タクシー不足対応では、女性やパートタイム運転手を増やすため勤務形態を柔軟化▽2種免許取得の支援▽市町村やNPO法人が自家用車で地域住民を送迎する「自家用有償旅客運送」を積極的に活用―などを明記した。
コロナ禍による行動制限や入国規制が撤廃されて以降、観光客は急増。9月の訪日外国人数は約218万人となり、コロナ禍前の19年9月と比べて96%の水準まで回復した。