白老町大町5の元漁師、高橋信吉さん(74)は3年ほど前から毎日、国道36号を挟んだ自宅の前浜で1人、清掃活動に励んでいる。「人目につかない場所だからこそ、きれいにしておきたい」という思いからで、午前4時ごろから5時間ほど、ごみ拾いや分別に汗を流している。
前浜のごみはコンクリートの壁があることによって道路から目立ちにくく、走行中の車両から生活ごみをポイ捨てする心ない人がいる。食べかけの弁当、飲みかけの瓶やペットボトルもうち捨てられている。洗濯槽などの大型家電ごみも転がり、散らかりようは惨たんたるありさまだ。
高橋さんは釣りが趣味で、サケを釣りに前浜に出た際、大量のごみを目の当たりにした。釣れるまでの間、ごみを拾い始めたが、あまりにも量が多いため、毎日続けることにしたという。前浜は砂に埋もれた消波ブロックで足場が悪く、外国の文字で書かれたポリタンクが漂着しているなど危険もあるが、「前浜は庭みたいなもの。大丈夫だ」と意に介さない。
3年続けてもごみの量は変わらず、「今年は特に多い。40リットル入りのボランティア袋で80袋くらい集めた。ポイ捨てする人に厳しいことを言いたくないが、あんまりそういうことはしちゃ駄目だ」と苦言を呈する。
作業は、隣家の友人で釣り仲間の鈴木茂信さん(65)やその場に居合わせた釣り人が手伝ってくれることもある。鈴木さんは「外国のペットボトルはラベルに切り込み線がないのでむきにくい。ごみから学ぶこともあるね」と笑う。高橋さんも、腐って異臭を放つ食べかけの弁当のごみに「臭くてたまらない。でも洗って分別しています」と静かに語る。
今年集めたごみは夏に一度、処理場へ運んだ。鈴木さんらの親切に感謝しつつ、9月から再び、回収と分別を繰り返している。