【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘で9日、双方の死者が約1600人となった。イスラエルはガザに激しい空爆を加え、予備役30万人を招集。戦闘激化への懸念が高まる。一方、ハマスは、イスラエル領内で捕らえた人質について、イスラエルが事前通告なしに民家を空爆するたびに処刑すると警告した。
報道によるとイスラエル側では少なくとも900人が死亡し、約2500人が負傷。ガザでは少なくとも687人が命を落とし、負傷者は約3700人に上った。ガザ東方約5キロにあるイスラエル南部の集落近くで開かれていた野外音楽祭の会場では、250人以上の遺体が収容された。イスラエル側の被害が拡大した背景には、ハマス戦闘員がこうしたイベントや集落を襲ったことがある。
ネタニヤフ首相は9日夜にテレビ演説し、ハマスを「女性や子供、高齢者の殺害を喜ぶ卑劣な敵」と呼んだ。その上で、ハマスは残虐性で知られる過激派組織「イスラム国」(IS)と同じだとして、「世界がISを倒したようにわれわれもハマスを打倒する」と徹底的に反撃する姿勢を改めて示した。
イスラエルは、ガザへの電気や水道、ガスなどの供給を停止する「完全包囲」を発表。軍は9日、同日朝までにハマスに関連するガザの目標1200カ所以上を爆撃したとX(旧ツイッター)に投稿し、「きょうはその数を2倍にした」と説明した。
空爆を巡りハマスは9日、住民待避のための事前通告なしにイスラエルが空爆した場合、人質を処刑し、その様子を公開すると発表した。ハマスは人質の安全を確保していると主張するが、「人間の盾」として扱っているようだ。
一方、緊張はイスラエル北部にも広がる。報道によると、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエル軍が交戦。ヒズボラ側で少なくとも3人が死亡した。戦闘が拡大すれば、情勢は一層深刻化する。
アラブ連盟(21カ国・1機構)は11日に外相級会合を開催する。「イスラエルの攻撃を停止する方法」について協議するという。