家事や家族の介護を担う子ども「ヤングケアラー」を支援するため、苫小牧市は2024年4月の施行を目指す条例の素案をまとめた。市の責務と市民、関係機関、保護者の役割を明文化し、ヤングケアラーの存在に気付き、見守り、孤立させない社会の実現を推進する。31日までパブリックコメント(意見公募)を受け付け、来年2月の市議会定例会に条例案を提出する方針だ。(報道部・姉歯百合子)
ガイドラインも同時に作成中
ヤングケアラー支援の指針とする条例案は全15条で構成。本人の主体性を尊重した上で、子どもの最善の利益を守ることを基本理念とする。
市に対しては▽支援に関する施策の策定や実施▽多職種との連携▽ヤングケアラーに早めに気が付くように努める▽実態把握や支援の実行―などの責務を明示。介護や障害児・者支援、医療などの関係機関については、支援の必要性の早期把握に加え、子どもを「介護力」に含めない適切な福祉サービスに配慮することを役割とした。
授業や生活指導などで子どもと接する時間が長い学校には、日々の変化を捉えた早めの気付きや教育機会が確保できているかの確認、相談対応などの役割を担うことを盛り込んだ。
市にはさらに、支援を担う人材育成のための研修の実施や相談体制の整備、同じ立場の子ども同士の交流の場づくりなどの施策を講じるよう求めた。
市は条例案と合わせて、支援に当たる人向けのガイドラインも作成中だ。ヤングケアラーと信頼関係を築けるような接し方や対応する上での心構え、支援の流れを表す図や状況を把握するためのチェックリストなども盛り込む考え。
安心して声を上げられる社会へ
条例案は、市子ども・子育て審議会の中に、学識経験者や子ども・高齢者・障害者福祉に関わる委員らでつくる検討部会を設け、5月から協議を重ねてきた。
市こども相談課は「家族のケアといったデリケートな問題は『家族で何とかしなければ』と考えてしまうケースも多い。条例を通じてヤングケアラーへの理解を進め、子どもが安心して声を上げられる社会をつくりたい」と話している。
パブリックコメントの問い合わせは同課 電話0144(32)6369。
ヤングケアラー 本来、大人が担うことが想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子ども。学校や地域が気付かないケースも多く、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を日常的に負ったり、学業や遊びの時間が確保できないこともある。