遠い昔。苫小牧の中心商店街も元気な時代があった。駅前通商店街振興組合の青年部が中心となり、毎年初夏に「ハスカップウイーク」というイベントを打ち、人気を集めていた。メイン行事で6本の作品を一挙に上映する「オールナイト映画祭」があった。駆け出し記者の頃、その作品選考に携わった思い出がある。
会場となった苫小牧日劇で深夜から未明にかけて、その作品は上映された。金子正次さんが脚本を書き主演し、デビュー作でありながら遺作となった「竜二」(川島透監督)。低予算映画ながら、松田優作さんも絶賛した傑作と思う。フォーリーブスのメンバーで解散後にジャニーズ事務所を退所し、業界から「干されて」いた北公次さんも重要な役で好演した。北さんはジャニー喜多川氏の性加害問題を1988年11月、最初に告発した。だが、テレビ、新聞から黙殺された。
彼の告発から34年の歳月が流れた今春、英BBC報道で流れが変わった。国連人権理事会も「日本のメディアはもみ消しに加担した」と指摘。「メディアの沈黙」の責任が問われている。指名「NG記者リスト」も判明した先日の会見で、タレントの事務所幹部の言葉に、記者側から拍手が起こったことに強い違和感を覚えた。積年の「沈黙」の根は深い。(広)