ヤナギの葉が黄色く色づいて枯れ始める頃、鵡川などに遡上(そじょう)するシシャモ。北海道の太平洋岸を回遊し、鵡川と道東の十勝川、渡島管内八雲町の遊楽部川などに遡上すると言われている。更科源蔵著の「アイヌ民話集」(みやま書房)に、その辺りの事情が詳しい。
雷神の妹がシシリムカ(沙流川)の上流から人間の集落を見ると炊事の煙が見えない。妹が天に向かって危急を知らせると、足の速いフクロウの神がヤナギの枝を杖に天から降り、穏やかな流れの鵡川に葉を流しシシャモにした。しかし、魚が葉の数よりも少ない。フクロウの神があまりに速いために、葉が遊楽部川にも落ち、シシャモが上るようになったという。鵡川の古老からの聞き取りだ。
昔、静内支局に勤務していた時、Tさんの居酒屋によく行った。「十勝のシシャモは脂が足りない。鵡川のシシャモは脂焼けしている。ちょうど良いのは節婦のシシャモ」。Tさんは生まれも育ちも新冠町節婦。干す塩加減や時間にうるさい。炭火で焼かれ皿に並んだシシャモにしょうゆをかけようとした客に「何しやがる」とデレッキを振り上げたとか。
極端な不漁の続いていた胆振日高のシシャモ漁が資源回復のため、今年の休漁を決めた。フクロウは今、どこに。(水)