前回のコラムでは「短い夏」と書きましたが、暑く長い夏だったのではないでしょうか。気温が高くなってきているせいもあるのか、サケやマスの遡上(そじょう)の数も年々減ってきているのだとか。毎年のように不漁というニュースを耳にしています。この時期のサケやマスは産卵をするために川へ戻って来るとされますが、その一部を恩恵として受け取るのは人間だけではありません。
どの河川にもサケやマスが遡上するというわけではありませんが、そのような河川敷を秋に歩くと、人間の手のひらほどで茶褐色のように見える野鳥を目にする機会が増えます。
その正体はカワガラスという野鳥。似たような鳥にミソサザイという野鳥もいますが、それよりは体が大きく、比較的観察しやすいです。名前にカラスと付いていますが、ハシブトガラスのような街中にいるカラスの仲間ではありません。川を勢いよく飛んでいくので落ち着いての観察は難しいかもしれませんが、川で茶褐色の野鳥を見つけたら恐らくカワガラスと言えるでしょう。
どうしてこのカワガラスがサケやマスの恩恵を受けているのか。カワガラスは、水中に潜ることが得意な野鳥です。川に流されている水生昆虫などを捕まえて栄養補給をしているとされるのですが、秋は産み落とされた魚卵を口にしているところを多く見掛けます。魚卵だけではありません。卵からかえった稚魚なども彼らにとっては重要な栄養源になるのです。
しかし、このような生き物が見られる河川は、カワガラスや人間だけが好むわけではありません。道内各地で問題になっているヒグマも現れます。川の音で気配を感じ取るのが遅れてしまうと、人身事故になる危険性もあります。散策される際は、周辺地域のヒグマ出没情報をしっかりと確認した上で、ヒグマスプレーなど万が一の遭遇に対応できるよう護身も欠かさずするようにしましょう。みんなで楽しく自然を満喫するためにも大切な準備です。
(日本野鳥の会苫小牧支部・小林誠副支部長)